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2017年7月12日水曜日

DISTANCE -映画が作られるまで 是枝 裕和 (著), 若木 信吾 (写真) スイッチパブリッシング














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映画の現場で交錯するふたつの視線 構想時点から撮影、編集、国内外の配給まで、1本の映画が作られていく全過程を監督本人が綴るドキュメントと、同じ時間、場所を共有しながらも映画のカメラとはまた違った視点で現場の空気を切り取る若木信吾のフォトストーリー。1冊の中にふたつの物語が同時進行します。

『ワンダフルライフ』の次の作品として是枝裕和監督が思い描いていた、ARATAと伊勢谷友介というふたりの俳優の“小さなロードムービー”という構想は、オウム真理教をめぐるメディア報道と出会うなかで、あるカルト教団が引き起こした無差別テロの「加害者遺族」の物語へと変化していきました。映画という「生き物」が現実に触発され形を変えていく過程、キャストとのコラボレーション(劇中の台詞の多くは俳優自身の言葉で成り立っている)から生まれる予想外の展開、ドキュメンタリーとフィクションの接点を模索する上での葛藤などが1999年9月から2001年2月までの日記形式で綴られています。数多くの社会派ドキュメンタリー作品を手掛けてきた是枝が、宗教、メディア、リアリティといった今日的な主題とどう向き合っていったのか、本書は単なる映画のメイキングという枠を超えて、地下鉄サリン事件や高速バスジャック事件などの報道で露になった現代日本社会が抱える闇をえぐり出します。

一方、映画の撮影現場初体験の若木は、キャストやスタッフから一歩離れて、あくまで第三者の立場から現場の空気をカメラにおさめていきました。たとえ映画のカメラと別の方向を向いていようと、そこに写っているのはまぎれもない映画製作現場の真実。静かな情熱がただよう181点の作品群はいわゆる映画の“スチール写真”や“メイキング写真”とは一線を画し、写真家若木信吾によるもうひとつの『ディスタンス』として立ち上がってきます。
(発行元より)